シーシャバーが店内でシーシャ(水たばこ)を提供するために満たすべき「喫煙目的施設」の主な要件は、次の4つです。
- たばこの対面販売(製造たばこ小売販売業の許可を受け、対面で販売)
- 喫煙が主目的の施設である
- 技術的基準を満たす(出入口で0.2m/s以上の気流・壁天井で区画・屋外へ排気)
- 主食を主に提供しない(通常主食と認められる食事を主として提供しない)
※法的な位置づけには議論(グレーゾーン)があり、最終的な該当性判断は所轄行政の確認が必要です。詳細は以下で解説します。
シーシャバーを開業して店内でお客様にシーシャ(水たばこ)を吸ってもらうには、改正健康増進法のもとで喫煙を認められる枠組み——多くの場合「喫煙目的施設」の要件を満たす必要があります。
ここを外すと、内装が完成してから設計をやり直す事態にもなりかねません。
本記事では、シーシャバーが満たすべき4つの要件と、換気の技術的基準(出入口で0.2m/s以上)、たばこの対面販売に必要な許可までを、厚生労働省の一次情報をもとに、開業前に押さえる順で整理します。
※本記事は2026年時点の一般的な整理であり、法的助言ではありません。
該当性の判断・具体的な運用は制度改定で変わり得るため、着手前に必ず所轄の保健所・行政窓口にご確認ください。
そもそも「喫煙目的施設」とは?(原則屋内禁煙の例外)

改正健康増進法により、多数の人が利用する施設は原則として屋内禁煙とされています(2020年4月全面施行)。
飲食店も原則屋内禁煙ですが、一定の要件を満たす「喫煙目的施設」などは、例外的に喫煙を提供できる枠組みとして位置づけられています。
シーシャ(水たばこ)は「たばこ」に該当するため、店内で吸ってもらう業態は、この喫煙を認められる枠組みを前提に設計する必要があります。
多くのシーシャバーは、「喫煙を主目的とするバー・スナック等」の喫煙目的施設としての要件充足を目指します。
シーシャバーが満たすべき4つの要件
「喫煙を主目的とするバー・スナック等」の喫煙目的施設として想定される主な要件は、次の4つに整理できます。
| 要件 | 内容のポイント |
| ① たばこの対面販売 | 製造たばこの小売販売業の許可を受け、施設内で対面(または通信)でたばこを販売していること |
| ② 喫煙が主目的 | 客に喫煙をさせることを主たる目的とする施設であること(飲食提供が主目的ではない) |
| ③ 設備(技術的)基準 | 政省令で定める換気・区画・排気の技術的基準を満たすこと(後述の0.2m/s等) |
| ④ 主食を主に提供しない | 社会通念上、通常主食と認められる食事を「主として」提供していないこと |
要件の該当性は個別事情により判断されます。実際の適用は所轄行政の確認が必要です。
ポイントは、「飲食店」ではなく「喫煙を主目的とする施設」として設計するという点です。
フードを主軸にした業態設計とは前提が異なるため、コンセプト段階から意識しておくと後戻りが減ります。
技術的基準の中身|0.2m/s換気・区画・屋外排気

③の設備基準について、厚生労働省は喫煙室(喫煙目的室)の技術的基準として、主に次の3点を示しています。
① 出入口において、室外から室内に流入する空気の気流が 0.2m毎秒以上 であること
② たばこの煙が室内から室外に流出しないよう、壁・天井等によって区画されていること
③ たばこの煙が 屋外又は外部に排気 されていること
この3点は健康増進法施行規則 第18条(喫煙目的室の技術的基準)に定められており、中身は喫煙専用室の基準(同第16条)と同じです。違いは使い方で、喫煙専用室では飲食ができないのに対し、喫煙目的室では主食以外の飲食ができ、施設の全部を喫煙目的室にすることもできます。
つまり、「入口から中へ向かう空気の流れ(0.2m/s以上)」「煙が漏れない区画」「屋外への排気」の3点を満たす換気・区画設計が求められます。
単に換気扇を付ければよいわけではなく、気流の向きと風速を数値で満たす設計・施工が要点です。
0.2m/sの測り方|入口の3点で測って記録する
厚生労働省は、たばこの煙が漏れていないかを確かめる測定方法の例を示しています。要点は次のとおりです。
| 測る場所 | 出入口の開口面の中央で、上部・中央部・下部の3点。すべての点で0.2m/s以上が目安 |
|---|---|
| 扉 | 扉を完全に開けた状態で測る(普段は扉を閉めて使う部屋でも同じ) |
| 測定器 | JIS T 8202に準拠した一般用風速計が望ましい(プローブの向きに注意) |
| 条件 | 営業時と同じ運転状態で、喫煙者が多い時間帯に測る。事前に線香などで風の向きを確認しておく |
| 頻度 | 設備を変えたときは速やかに。その後はおおむね3か月以内ごとに1回以上(良好な状態が1年以上続けば年1回まで) |
| 記録 | 日時・測定点の高さ・風速・排気装置の状態・測定器などを記録し、3年間保存するのが望ましい |
出典:厚生労働省「たばこ煙の流出防止措置の効果を確認するための測定方法の例」(北九州市掲載資料)、厚生労働省「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」(基発0701第1号・2019年7月1日)
必要な排気量の目安|入口の大きさから逆算する
0.2m/sは「入口を通る空気の速さ」なので、入口が広いほど必要な排気量は増えます。東京都の研修資料では、次のような計算例が示されています。
入口 幅0.9m × 高さ2m × 0.2m/s × 3,600秒 × 安全係数1.2 = 約1,555㎥/h
実際には、給気の取り方や区画の形で必要な能力は変わります。内装を決める前に入口の寸法を固め、そこから排気設備を選ぶと後戻りが減ります。適合しているかどうかの判断は所轄の保健所が行うため、設計の段階で相談しておくと確実です(出典:東京都「喫煙室等設置の技術的基準に関する具体的な対応について」)。
入口・扉の工夫
同じ排気量でも、入口まわりの作り方で気流は安定しやすくなります。厚生労働省のガイドラインでは、次のような工夫が挙げられています。
- 扉を常に開けておく場合は、空調の吹き出しが入口の気流を乱さないようにする
- 扉を閉めて使う場合は、給気口(ガラリ)を設け、スライド扉にすると効果的
- のれんやエアカーテンで開口を狭める(のれんの場合は、覆われていない部分で測る)
- 部屋を長方形にし、入口と排気口を向かい合う短い辺に置く
屋外に排気できない場合|脱煙機能付き喫煙ブースの経過措置
煙を屋外に出せない建物について、規則の附則第4条は経過措置を設けており、対象に「第二種施設等又は喫煙目的施設」と書かれています。一定の性能を持つ脱煙機能付きの喫煙ブースで、屋外排気の代わりとすることが認められる場合があります。
ただし対象は、2020年4月1日の時点で既にあった建物で、管理権原者の責任ではない理由で屋外に排気できない場合に限られます。また、標識に脱煙装置付きであることを表示する必要があります。2020年4月以降の建物での新規開業には使えないため、物件選びの段階で屋外排気ができるかを確認しておくことが重要です。神奈川県のように、条例で対象をさらに絞っている自治体もあります(出典:e-Gov法令検索 健康増進法施行規則、神奈川県「施設管理者のためのハンドブック」)。
「主食を主に提供しない」の実務
④の「主食」とは、社会通念上、通常主食と認められる食事(ごはん・麺・パン等)を指すと整理されます。
これらを「主として」提供していると、喫煙目的施設の要件から外れる方向に働きます。
実務では、ナッツ・チーズ・スナック等の軽食やおつまみを中心に組み立てる設計が採られることが多いですが、どこまでが「主食を主に提供しない」に収まるかの線引きは所轄行政の判断によります。メニュー設計の段階で確認しておくと安全です。
たばこの対面販売=小売販売業の許可(無許可は罰則)
①の「たばこの対面販売」には、製造たばこの小売販売業の許可(財務大臣の許可)が必要です。
申請は日本たばこ産業(JT)の窓口を経由して行うのが一般的で、距離基準など所定の要件に基づき審査されます。
この許可を受けずにたばこを小売販売すると、たばこ事業法上の罰則(罰金・上限30万円)の対象になり得ます。
喫煙目的施設の前提となる要件でもあるため、開業スケジュールの早い段階で許可の見通しを立てておきましょう。
届出・確認の進め方(窓口が分かれる点に注意)
シーシャバーの開業では、確認・手続の窓口が複数に分かれます。喫煙目的施設としての標識掲示や、20歳未満の立入禁止などの管理義務も生じます。主な確認先を整理します。
- 所轄の保健所:喫煙目的施設としての該当性・標識・食品営業許可(飲食提供時)の確認。
- JT(日本たばこ産業)/財務局:製造たばこ小売販売業の許可申請。
- 消防署:防火対象物の使用開始届・消防設備など(内装・収容人数に応じて)。
- 換気・区画の技術基準:0.2m/s等を満たす設計であることの確認(施工業者・設計と連携)。
【2026年7月の最新動向】喫煙目的施設が「届出制」へ
2026年7月、厚生労働省の受動喫煙対策に関する取りまとめで、シガーバーやスナックなどが想定される「喫煙目的施設」について、営業する事業者が自治体へ届け出る「届出制」を新たに導入する方針が示されました。多くのシーシャバーもこの区分での営業を検討するため、今後の運用に関わる重要な動きです。
届出制が検討される背景には、要件を満たさないまま「喫煙目的施設」を名乗る店舗があることや、自治体が営業実態を把握しきれていないことがあります。届け出を通じて行政の指導が行き届くようにする狙いとされています(出典:日本経済新聞・時事通信・NHK 2026年7月報道)。
厚生労働省の受動喫煙対策専門委員会による「議論のとりまとめ」(2026年7月)は、喫煙をする場所の提供を主な目的とするシーシャバーは喫煙目的施設に該当しうることに注意が必要だと明記しました。届出は省令の改正で求める方針で、2026年10月25日時点では施行日は決まっていません。
現時点で「確定していること」と「未確定のこと」
✅ 確定:厚労省の取りまとめで届出制の導入方針が示されたこと。喫煙目的施設の要件(①たばこの対面販売 ②喫煙が主目的 ③設備の技術基準 ④主食と認められる食事を主に提供しない)自体は従来どおりです。
🔎 未確定:具体的な施行日・届出の様式・対象範囲は今後の省令改正で定まります。本記事は方針段階の情報であり、施行時期を断定するものではありません。最新の取り扱いは所轄の保健所・自治体の案内を必ずご確認ください。
あわせて同じ取りまとめでは、加熱式たばこを紙巻きたばこと同等に扱う規制強化は見送られ、3年後をめどに改めて検討するとされました。既存の小規模飲食店の喫煙特例についても同様に3年後めどの再検討です。喫煙目的施設として営業するシーシャバーにとっては、当面の枠組みは大きく変わらない一方で、届出制への対応が新たな論点になります。
いま開業準備中・運営中の店舗は、届出制が始まった際にスムーズに対応できるよう、自店が喫煙目的施設の4要件を満たしているか(製造たばこ小売販売業の許可・主食を主に提供しない運用・換気や区画の設備基準)をあらためて点検し、書類と店舗設計を整えておくと安心です。
実態調査から見える「つまずきやすい点」
同じとりまとめに載っている実態調査では、次のような状況が報告されています。
- 喫煙目的施設に当たることを自覚していない施設が約2割弱
- 入店前に喫煙できることが適切に表示されている施設は5割弱
- 喫煙目的施設と答えた施設の約4割が、たばこの販売許可に関する帳簿を備えていない
開業前には、次の5点を確認しておくと届出制にも備えられます。
- 自店の区分(喫煙目的施設に当たるか)を保健所に確認したか
- 入口に喫煙目的施設の標識を掲示したか
- たばこ小売販売業の許可と、その帳簿をそろえたか
- 20歳未満の立入禁止を、客・従業員の両方で運用できるか
- 入口の風速を3点で測り、記録を残しているか
たばこの販売許可と帳簿は、仕入れの流れと一体で準備するものです。フレーバーの仕入れ先も早めに決めておくと、開業までの書類がそろえやすくなります(業務用の卸売りについて)。
開業準備・業務用の仕入れについて
Shisha Amigoは、シーシャ機材・フレーバー・備品の業務用の卸売り(仕入れ)に対応しています。開業にあたっての機材選定や、席数に合わせたシーシャ台・備品のそろえ方のご相談も承ります。換気・区画の設計は、内装・設備の施工業者と所轄の保健所にご相談ください。
卸売りの詳細は シーシャ用品の卸売りページ をご覧ください。開業の進め方や仕入れの初回相談は、フォームまたはLINEからお気軽にどうぞ(1対1でご相談いただけます)。
💬 喫煙目的施設・シーシャバー開業に関するよくある質問
- Qシーシャバーは必ず「喫煙目的施設」にしないといけませんか?
- A
店内でお客様にシーシャ(たばこ)を吸ってもらうには、改正健康増進法のもとで喫煙を認められる枠組みが必要です。多くのシーシャバーは「喫煙を主目的とするバー等」の喫煙目的施設の要件充足を目指します。ただし個別の該当性は所轄の保健所・行政にご確認ください。
- Q換気の技術的基準(0.2m/s)とは具体的に何ですか?
- A
厚生労働省は喫煙目的室の技術的基準として、出入口で室外から室内に流入する気流が0.2m毎秒以上であること、たばこの煙が室外へ流出しないよう壁・天井等で区画されていること、煙が屋外又は外部へ排気されていることを示しています。給排気の位置・風量・区画設計で満たします。
- Q「主食を主に提供しない」とありますが、フードは一切出せませんか?
- A
「主食」は社会通念上、通常主食と認められる食事(ごはん・麺・パン等)を指すと整理されます。これらを主として提供しない範囲で、ナッツやスナック等の軽食を組み合わせる設計が採られることが多いですが、線引きは所轄行政の判断によります。メニュー設計時に確認するのが安全です。
- Qたばこの対面販売の許可はどこに申請しますか?
- A
製造たばこの小売販売業の許可(財務大臣の許可)が必要で、申請は日本たばこ産業(JT)の窓口を経由するのが一般的です。許可を受けずに小売販売すると、たばこ事業法上の罰則(罰金・上限30万円)の対象になり得ます。
- Q20歳未満のお客様やスタッフは入店できますか?
- A
改正健康増進法では、喫煙可能な場所には客・従業員を問わず20歳未満を立ち入らせてはならないとされています。年齢確認の運用やスタッフ配置を開業前の設計に含めておく必要があります。
- Q0.2m/sはどうやって測りますか?
- A
出入口の扉を完全に開けた状態で、開口面の中央の上部・中央部・下部の3点を風速計で測り、すべての点で0.2m/s以上あるかを確認します。営業時と同じ運転状態で測り、その後もおおむね3か月ごとに測って記録を残すことが、厚生労働省の測定方法の例で示されています。
- Q受動喫煙防止対策助成金は使えますか?
- A
厚生労働省の受動喫煙防止対策助成金は、既存の飲食店(既存特定飲食提供施設)が喫煙専用室などを設ける場合を対象としており、喫煙目的室は助成対象の設備として記載されていません。シーシャバーで使えるかどうかは、申請先の都道府県労働局に事前に確認してください。
まとめ
シーシャバーを喫煙提供の業態として開業するには、①たばこの対面販売の許可 ②喫煙が主目的 ③0.2m/s等の技術的基準 ④主食を主に提供しないの4要件を、コンセプト・内装・換気設計と一体で満たしていくことが要点です。
確認窓口が保健所・JT/財務局・消防と分かれる点、そして最終的な該当性判断は所轄行政による点を押さえ、早い段階で見通しを立てましょう。
開業準備や機材・フレーバーの仕入れは、お気軽にご相談ください。
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本記事で参照した一次情報・出典
- 厚生労働省「なくそう!望まない受動喫煙。」喫煙目的室の技術的基準ほか:https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point/
- 厚生労働省「改正健康増進法の施行後の現状について」(受動喫煙対策関係資料・2026年3月):https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001668799.pdf
- 健康増進法施行規則(第18条・附則第4条):https://laws.e-gov.go.jp/law/415M60000100086
- 厚生労働省「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」(2019年7月):https://www.mhlw.go.jp/content/000524558.pdf
- 厚生労働省「たばこ煙の流出防止措置の効果を確認するための測定方法の例」(北九州市掲載):https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000887656.pdf
- 東京都「喫煙室等設置の技術的基準に関する具体的な対応について」:https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/kensui/kitsuen/kensyu/pdf/022602.pdf
- 神奈川県「施設管理者のためのハンドブック」(2024年2月):https://www.pref.kanagawa.jp/documents/8587/0602handbook.pdf
- 厚生労働省 受動喫煙対策専門委員会「議論のとりまとめ」(2026年7月):https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001725947.pdf
- 厚生労働省「受動喫煙防止対策助成金」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049868.html
