シーシャフレーバーについて調べていると、必ずと言っていいほど目にする言葉があります。
「食品グレードだから安全」「海外では普通に使われている」「今まで問題になったことはない」
これらは嘘ではありません。しかし同時に、十分な説明でもありません。
この記事では、特定の国やメーカーを断罪することを目的とせず、
- なぜ問題視される添加物が存在するのか
- なぜ海外では普通に使われているのか
- なぜ日本ではほぼノーチェックで流通しているのか
その構造を、法律・科学・業界実務の視点から整理します。
結論を先に言えば、問題の本質は「危険か安全か」ではなく、情報の非対称性にあります。
まず前提を整理する:この記事で言う「添加物」とは何か
最初に重要な前提を整理します。
この記事で扱う「添加物」とは、以下のようなものです。
- 香料(フルーツ、スイーツ系などの風味成分)
- 甘味料(味を強く、吸いやすくするためのもの)
- 着色料(見た目を良くする目的)
- 保湿剤(主にグリセリン類)
ここで強調しておきたいのは、添加物=危険、ではないという点です。
問題になるのは、「何が入っているか」そのものよりも、
- どの用途を前提に評価された成分か
- どの温度・条件で使われるか
この2点です。
世界で最も厳しい基準:EU(TPD)は何を問題視しているのか
シーシャフレーバーに関する規制を語る上で、避けて通れないのが EUのTPD(欧州タバコ製品指令) です。
TPDの基本思想は「予防原則」
TPDの最大の特徴は、「明確な被害が出てから禁止する」のではなく、
疑わしいものは、被害が出る前に制限する
という予防原則を採用している点です。
これは日本や中国とは、思想そのものが異なります。
TPDが具体的に制限している添加物の考え方
TPDでは、以下のような観点で添加物が制限されています。
健康的な誤解を与えるもの
ビタミンCなど、「体に良さそう」という印象を与える添加物は、そのイメージ自体が問題視されます。
刺激・覚醒を連想させるもの
カフェイン、タウリンなど、
覚醒効果やエネルギー向上を想起させる成分も制限対象です。
加熱時に有害性が指摘される可能性があるもの
高温で加熱された際に、
- 発がん性
- 変異原性
- 生殖毒性
といったリスクが指摘される物質は、「毒と証明されていなくても」排除されます。
重要なのは、常温で安全かどうかではなく、加熱・吸入時にどうかという評価軸です。
EUではすべての成分報告が義務化されている
EUでは、シーシャを含むタバコ製品について、
- 使用している全成分を当局に届け出
- 未報告成分が含まれていれば販売不可
という仕組みが取られています。
この「事前開示」が、後述する日本との決定的な差になります。
なぜ「食品グレード(Food Grade)」が安全の根拠にならないのか
ここが、この記事で最も重要なポイントです。
多くのフレーバー業者は、「食品添加物として承認されている」ことを安全性の根拠にします。
しかし、食品用と吸入用は全く別物です。
経口摂取と吸入では、体の防御システムが違う
口から摂取された物質は、
- 胃酸
- 消化酵素
- 肝臓
といった段階を経て分解・処理されます。
一方、肺に吸い込まれた物質は、ほぼ直接血中に取り込まれます。
この違いは決定的です。
具体例:ジアセチル(ポップコーン肺)
ジアセチルは、バター風味を出す香料として知られています。
- 食べる分には問題ない
- しかし吸入すると、肺疾患(閉塞性細気管支炎)との関連が指摘
この問題はVAPE業界では常識ですが、シーシャ業界ではまだ十分に共有されていません。
ここで重要なのは、「今すぐ危険」という話ではなく、
用途が違えば、評価基準も変わる
という事実です。
「FDA承認」「食品グレード」の本当の意味
FDA承認や食品グレードは、吸入時の安全性を保証するものではありません。
「食品としてOK」
=
「煙として吸ってOK」
ではない、という点が非常に誤解されやすいのです。
なぜ中国や一部海外では普通に使われているのか
ここでよくある誤解があります。
「中国製だから危険」という話ではありません。
問題は構造です。
規制思想の違い
- EU:予防原則
- 中国:流通後対応型
- 日本:グレーゾーン放置型
中国では、問題が起きてから対応する考え方が一般的です。
そのため、食品添加物として問題がなければ吸引用途まで想定されないケースが多くなります。
製造現場のリアル
- 「食品添加物=安全」という認識
- 吸入リスクという概念が共有されていない
- OEMによりレシピがブラックボックス化
多くの場合、悪意ではなく前提知識の欠如が原因です。
日本の法規制に存在する致命的な空白
では、日本ではどう扱われているのでしょうか。
たばこ事業法の限界
財務省が所管するたばこ事業法は、
- 税金
- 流通管理
が主目的で、成分の安全性評価はほぼ行われません。
食品衛生法が適用されない理由
タバコは「食品」ではないため、食品衛生法の対象外です。
つまり、
- 食品としても
- 医薬品としても
どちらの基準も適用されません。
結論:日本は輸出国基準に依存している
日本では、
合法 = 安全
ではなく、
未評価のまま流通している
という状態が続いています。
プロが見るべきポイント:MSDSと「温度」という視点
MSDS(化学物質等安全データシート)
業者が「安全です」と言うだけでなく、
- MSDSを提出できるか
- 内容を説明できるか
ここが、プロとそうでない業者の分かれ目です。
シーシャは約300℃で加熱されるという現実
シーシャは、炭によって300℃近い熱が加えられます。
常温・食品用途を前提とした香料が、この温度でどう化学変化するのか。
正直なところ、誰も十分に検証していません。
この「分からなさ」こそが、最大のリスクです。
では、危険なフレーバーを完全に避けることは可能なのか
結論から言えば、100%避けることは不可能です。
しかし、
- 情報を集める
- 成分を確認する
- メーカーに質問する
ことで、リスクを下げることはできます。
知らないまま使い続けることの本当のリスク
- 客への説明責任
- 健康トラブル時の対応
- 将来の規制強化
- 「知らなかった」が通用しない可能性
これらは、今後ますます重くなっていくでしょう。
よくある質問(Q&A)
Q1. 中国製のシーシャフレーバーは危険なのでしょうか?
A. 一概に危険とは言えません。
問題は「中国製かどうか」ではなく、どの成分が、どの用途・条件で使われているかが把握されているかです。
中国製であっても、成分が開示され、用途を理解した上で製造されている製品も存在します。
逆に、中国以外の国で作られていても、吸入用途を想定せずに食品香料を転用しているケースはあります。
Q2. 「食品グレード」と書かれていれば安全ではないのですか?
A. 吸入用途においては、安全の根拠にはなりません。
食品グレードとは、
「食べた場合に安全である」 という意味であり、
「煙として吸っても安全」 という保証ではありません。
経口摂取と吸入では、体内での処理経路がまったく異なるため、評価基準も本来は分けて考える必要があります。
Q3. EUでは規制されているのに、日本で使えるのはなぜですか?
A. 規制の考え方(思想)が違うためです。
EUは「予防原則」を重視し、リスクが疑われる段階で制限します。
一方、日本では
- たばこ事業法は税・流通管理が主目的
- 食品衛生法はタバコを対象外
となっており、成分安全性を横断的にチェックする制度がほぼ存在しません。
その結果、日本では輸出国の基準に依存したまま流通しているのが実情です。
Q4. 今まで問題が起きていないなら、気にしなくても良いのでは?
A. 「問題が起きていない」と「安全が確認されている」は別です。
多くの場合、
- 健康被害が因果関係として証明されにくい
- 長期的影響が追跡されていない
といった理由で、問題が表面化していないだけの可能性があります。
特に規制は、問題が起きてから一気に変わるケースが多いため、「今は大丈夫」という認識はリスクを含みます。
Q5. 店舗や輸入者は、最低限何を確認すべきですか?
A. 以下は最低限、確認すべきポイントです。
- 成分表(可能であればMSDS)の有無
- 「食品用」なのか「吸入用途を想定しているか」
- 高温加熱(シーシャ使用時)についての想定
- メーカーが質問に具体的に答えられるか
「安全です」という言葉だけでなく、どこまで説明できるかを見ることが重要です。
Q6. ユーザー(喫煙者)は何を意識すればいいですか?
A. 過度に恐れる必要はありませんが、知っておくことは重要です。
- フレーバーの出自を気にする
- 店に質問してみる
- 「安さ」だけで選ばない
こうした意識を持つことで、業界全体の透明性も少しずつ上がっていきます。
Q7. 将来的にシーシャフレーバーは規制されるのでしょうか?
A. 可能性は十分にあります。
EUの動向やVAPE業界の前例を見ると、吸入製品に対する成分規制は今後さらに厳しくなる流れにあります。
日本でも、事故や社会問題化をきっかけに一気に制度が整備される可能性は否定できません。
Q8. この記事の結論は「シーシャは危険」ということですか?
A. いいえ、そうではありません。
この記事の結論は一貫して、
問題は「危険か安全か」ではなく、
情報が開示されているか、理解されているか
という点にあります。
知った上で選ぶこと。それが、店舗・輸入者・ユーザーすべてに求められています。
まとめ:この問題の本質は「危険」ではなく「情報の非対称性」
海外業者が悪いとは限りません。彼ら自身が知らない可能性もあります。
だからこそ、
日本の輸入者・店舗・ユーザーが
目利きになる必要がある
この記事が、そのための判断材料になれば幸いです。
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